読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

孤独と闘っていた女の人のこと

このあいだ、面白い出来事があったので書いておこうと思います。

 

ある集まりの飲み会があった。会自体は特にこれと言って特筆すべきことは何もない、どこにでもある普通の飲み会だった。会場の近くの駅の正面で集合して、ぞろぞろと会場に向かって、幹事があいさつして、それぞれにお酒を楽しんでいた。彼女はその飲み会の中で誰よりも目立っていて、際立っていた。彼女だけが浴びるようにお酒を飲んで、その大きい声で皆の注目を集めていた。

 

そこでの彼女は、日常の中にかなり大きな寂しさを抱えていて、そのやり場に彼女自身も困っているように見えた。その寂しさは、自分ではどうすることもできないし、ましてや他人にどうこうできるような代物でもなかった。彼女は、自分の中にある大きな寂しさに翻弄されていた。残念ながら、その予想は当たってしまうことになる。

 

偶然帰り道が一緒だったので、彼女の支離滅裂な語りに耳を傾けながら、僕らは駅に向かっていた。しばらくして彼女は、孤独に耐えかねたように地べたに座って泣き崩れてしまった。突然のことで少しびっくりしたけど、こうなりそうな予感はしていた。目の前で号泣する哀れな女の人を寒空の下に捨て置くことはできなかった。その姿を過去の自分と重ねてみたら、自然と、何を言えば彼女が安心するかが分かるような気がした。背中をさすりながら、かつての僕が最も言って欲しかった言葉を彼女に言い続けた。

 

しばらく落ち着くような言葉をかけ続けていたら、今度はもっと激しい勢いで泣いてしまった。この時点ではもう、これを言えば彼女はもっと泣くとか、これを言えば彼女は少し冷めてしまうだろうな、、ということも、かなり荒削りではあったけど見通しは立つようになっていた。思い残しがないように、しっかりと泣かせてあげた。


彼女が自分の寂しさを僕にぶつけてきて、僕はそれを受け入れた。そうしたら彼女は、今度は自分自身を僕に差し出してきた。差し出してきたというよりも、なんとかして自分自身をも僕に受け入れさせようとしてきた。寂しさの次は私だと言わんばかりに。僕は彼女が傷つかないように気をつけながら、それでいて明確に、彼女を受け入れることはできないと言い続けた。ホテルに行ってセックスしようと言われても、僕は断った。

 

彼女の誘惑全体に絡みつく、彼女自身の寂しさ。彼女の存在を受け入れてしまったら、それは彼女の今のあり方を肯定することになってしまう。それが果たして誠実な行為と言えるのだろうか。彼女の寂しさを受け入れることはできても、彼女自身については、僕は終始受け入れることができなかったように思う。それは僕の役割じゃない気がした。仮にあの場で僕が彼女を受け入れても、そのようにして彼女と繋がってしまったら、彼女は僕に依存し続けないと生きていけなくなってしまう。それは僕にとっても彼女にとっても辛く苦しいものだと思う。

 

彼女の寂しさばかり言及していたけど、でもきっと、それを引き寄せてしまう僕自身の寂しさも、確実にあったと思う。それがなかったら、夜遅くまで好きでもない女の人を慰めたりしないと思う。けっきょく、似た者同士というか、同じ穴のムジナだったんだと思う。今回はたまたま彼女がそれをしたというだけで、僕が彼女みたいになってしまうことがないわけじゃない。だからこそ、それをしたくなる彼女の気持ちも分かるような気がする。分かるような気がする彼女の気持ちは、結局は僕自身の気持ちの投影でしかないけど、それでも分かるような気がする。